【技術深掘り】ゼクシオ14はなぜミスに強い?設計思想から仕組みを完全分解
「一撃の飛び」。その“合理的な”仕組みとは?
「飛距離の殻を破った『飛ぶゼクシオ』」。 ゼクシオ14が掲げた公式コンセプト「一撃の飛びのゼクシオ」という言葉は、非常に強烈です。
ですが、私たち合理的なゴルファーは、こう考えるはずです。 「“一撃”なら、芯に当たればどのクラブでも出る。ゴルフはミスとどう付き合うかだ」と。
まさしく、その通りです。 ゼクシオ14の真の凄みは、「一撃の飛び」という言葉の裏に隠された「その“一撃”が、なぜミスヒット時にも生まれるのか?」という設計思想と、それを実現する合理的な仕組み(メカニズム)にあります。
今回は、その新技術の「中身」を徹底的に分解していきます。

仕組み①:「一撃の飛びゾーン」を183%に広げた「ULTiFLEX」ボディ
なぜ14代目はミスに強いのか? その答えが、新設計「ULTiFLEX(アルティフレックス)」ボディです。
これは、単なるフェース(面)の反発ではありません。 メーカー資料を読み解くと「ヘッド全体をたわませる」技術であることが分かります。
具体的には…
- フェースとクラウンのエッジ周辺の剛性を強化(硬くする)
- そのすぐ後ろ(エッジ後方)を薄肉化(柔らかくする)
この「硬・軟」の剛性バランスにより、インパクトの瞬間、ヘッド全体がバネのようにたわみ、そして瞬時に復元する。このエネルギー増幅こそが、14代目の心臓部です。
メーカーの公式データは衝撃的です。 この仕組みにより、「一撃の飛びゾーン(COR値=0.82)」は、前作比で183%にまで拡大しているというのです。
これが「ミスに強い」ことの合理的な答えです。 つまり、これまで「ミス」だった打点(芯の上下左右)が、14代目では「一撃の飛びゾーン」に含まれる。だから、「飛距離のバラつき」が劇的に抑制されるわけです。

仕組み②:その“たわみ”を可能にした「VR-チタン」
では、なぜそんな無茶なヘッド設計(全体をたわませる)が可能になったのか。 それを実現したのが、世界初採用の「VR-チタン」です。
これは、強度が従来比で42%も向上した新チタン材。 合理的に考えて、「素材が強い」ということは、その分「フェースを薄く」できます。 そして、フェースを薄くして「余った重量(余剰重量)」が生まれますよね。
その余剰重量を、どこに使ったのか? そう、先ほどの「ULTiFLEX」ボディの「エッジ周辺の剛性強化」に、その重量を最適配分したのです。
「VR-チタン」が設計自由度を生み出し、その自由度を「ULTiFLEX」という“ヘッドがたわむ”仕組みに全振りした。 これこそが、14代目の設計思想を貫く、見事な技術的連鎖です。

仕組み③:「一撃」の精度を高める「New Activ Wing」
エンジン(VR-チタン+ULTiFLEX)がこれだけ強力になっても、スイングがブレてしまっては意味がありません。
そこで効いてくるのが「New Activ Wing」です。 13代目はクラウン側だけでしたが、14代目はソール側にも突起が追加されました。 この上下の“翼”が、ダウンスイング時の空力をさらに精密にコントロールし、ヘッドのブレを抑制。
これにより、強化されたヘッドの反発性能を、ブレなく正確にボールへ伝える。 「一撃の飛び」の“再現性”を高める、合理的な仕組みです。
結論:ミスを「ナイスショット」に変えるシステム
ゼクシオ14の「ミスへの強さ」は、単なる機能ではありません。
- VR-チタンが余剰重量を生み、
- ULTiFLEXがその重量で「ヘッドがたわむ」仕組みを作り、
- New Activ Wingが、そのヘッドを正しい軌道で導く。
これら全てが連動した、「ミスヒットを“一撃の飛びゾーン”に取り込む」ための一大システムなのです。
※記事内で紹介している「183%に拡大」や「強度が42%向上」といった数値は、すべてメーカー(ダンロップ)から提供された公式資料に基づくもので、主に前作(ゼクシオ13)との比較値となります。